もくの木ブログ

2017.03.28

♣ 産後の悩みと鍼灸ケアについて ①

赤ちゃんを出産後、お母さんの体は妊娠前の元の身体に戻っていきます。この時期を産褥期(産後の肥立ち)といい、6週間~8週間と言われています。産後に身体と心が順調に回復していくことを、昔から「産後の肥立ちが良い」と言われてきました。

妊娠・出産は女性にとって、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。特に産後は、出産時の出血や哺乳のために、血液が不足しやすい時期です。

そして、この時期には、悪露(おろ)がいつまでも赤い、高熱が出る、排尿時に痛む、乳房がはれて痛む、マタニティーブルーや産後うつなど、さまざまな悩ましい症状が起こることがあります。

ここでは、産後の症状と原因、そして東洋医学に基づく鍼灸治療の有用性についてお話します。

〈産後の悩ましい症状〉

〈悪露がいつまでも赤いとき〉

悪露とは、出産後に胎盤がはがれたあとの出血や産道の傷からの分泌物、粘液や細胞組織のかけらなどが混じり合って排泄される分泌液のことです。子宮組織が回復してくるので、悪露の色も薄く、量も少なくなっていきます。

しかし、10日以上をすぎても血が混ざったような赤い色をしている場合、子宮復古不全の疑いがあると言われています。

子宮復古不全とは、子宮の収縮が十分でないために子宮の回復が遅れることです。

悪露は産後3~6週間ほど続きます。子宮が収縮するにつれて、子宮内の傷も治り、出血もだんだんと減ってきます。

原因として、子宮内に胎盤の一部や卵膜のかけらなどが残っている場合や、悪露が出にくくなっている場合、また、子宮収縮を促すオキシトシンというホルモンの分泌が少ない場合などが考えられています。

子宮の回復が遅かったり、家事や仕事を早くからやり過ぎたりすると、いつまでたっても赤色の悪露が続くことがあります。

悪露の状態は、子宮の回復を示すバロメーターと言えます。

〈高熱が出るとき〉

産後2~3日したころ、突然38度~39度の高熱がでることがあります。これは産褥熱と言われています。

分娩の時にできた子宮壁や膣壁の傷から細菌が入ったことが原因です。出産後に体力が低下したために免疫力が落ち、体内で菌が繁殖したものと考えられています。また、悪露が停滞すると、細菌が増えやすい環境となるため注意が必要です。

他に、腎盂炎の場合も40度を超えるような高熱が出ます。細菌が尿道に入り、感染することがあります。産後は、子宮や膣、外陰部などさまざまなところに傷があるため、細菌に感染しやすい状態なのです。

産褥熱は、昔は母体の生命にも危険が及ぶために恐れられていましたが、現在では、分娩時に予防処置もとられるため心配は少なくなっています。

〈排尿時に痛むとき〉

尿の回数は多いのに、1回の尿の量は少なく、排尿時に痛みを感じる場合は膀胱炎の可能性があります。膀胱は産道と隣り合っているので、出産時の圧迫で傷がついたり、尿が出にくくなったり、細菌にも感染しやすくなるためです。悪露の手当てをきちんとして、清潔を保つことが大切です。

〈乳房がはれて痛むとき〉

これは、初産に多く見られる乳腺炎です。乳房が赤くはれて痛み、硬く、熱を持っている、などの症状があります。寒気がして38度以上の熱が出ることもあります。乳腺炎は、乳首の傷から細菌が入り、炎症を起こすことが主な原因と言われています。産後2~3週間になることが多いようです。

〈マタニティーブルー・産後うつ〉

マタニティーブルー・産後うつの原因は、西洋医学ではまだはっきりとはしていませんが、出産後はホルモンバランスが激変するため、これが精神状態に影響して起こると考えられています。マタニティーブルーは一過性の情緒不安定で、ちょっとしたことで憂鬱になったり、涙もろくなったり、イライラしたり、落ち込んだりします。症状は出産後2~3日以内にあらわれ、10日ぐらいで軽快します。通常、ホルモンバランスは1~2週間で妊娠前の状態に戻り、気持ちも自然に落ち着いてきます。

一方、産後うつは産後2~3週間から数カ月以内にはじまり、気持ちが落ち込み、終日ふさぎ込むなど心の症状があらわれます。一過性のマタニティーブルーとは違い、症状が1カ月、長いと年単位で続くと言われています。不安、不眠、食欲不振など身体的な症状を伴うこともあります。


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