もくの木ブログ

2016.09.30

♣ 腰痛について〈腰痛の鑑別について〉

腰痛の鑑別について

腰痛でお悩みの方が多く治療院に来られます。

まさに国民病となっている腰痛ですが、その症状は様々です。ひとくちに腰痛と言っても、痛みを感じる部分も、痛みの程度も個人差があります。もちろん原因も様々ですが、ここでは当鍼灸院でよく見られ、改善可能な腰痛の症状を中心に説明します。

腰痛には、【急性腰痛】【慢性腰痛】に分類されます。

 

【急性腰痛】俗称「ぎっくり腰」です。

外国では「魔女のひと刺し」なんて言うそうです。私も経験した事がありますが、朝の洗面台で・・・。長時間座っていてお尻を動かした瞬間・・・。重たい荷物を持ちあげたようとしたら・・・。「!!!痛い!!!」その後は、痛みもあり腰が固まって伸ばせない状態になり、酷い痛みが数日~数週間続く。このようなエピソードは沢山あります。

①一般的な「ぎっくり腰」体勢を変える時の上体の前屈・後屈、寝返りなどの回旋運動時に痛みが増悪する。痛いけど何とか動けるレベル=体位を変換する際に強く痛み、暫く動かしていると痛みの程度が軽くなる。この様な症状が最も多い。

②症状の重い「ぎっくり腰」寝返りもうてない、咳やくしゃみでもかなり強い痛みが襲う。まったく動けない程の痛み=寝ていても痛いなど痛みを回避する体勢を取ることが困難。

※ただしこの場合、腰以外の原因で腰痛が発生している場合もあり、当院では施術に入る前の段階で詳細の鑑別をしています。

痛みの程度により回復するまでの期間は異なりますが、①程度の一般的な急性腰痛は1~2週間で完治に至ります。完治までの期間を短くするだけでなく、受傷当初の強い痛みと運動制限を早期に回復させるのが鍼灸治療です。

 

【慢性腰痛】二足歩行を獲得した人間の宿命とでもいえるほど、慢性的に腰痛を抱えている方は沢山います。女性の17人に1人が、男性の23人に1人が腰痛で病院へ通院しているという統計もあり、慢性腰痛は多くの方々を苦しめているようです。

慢性腰痛は非特異的腰痛といって、外傷や骨折などの要因が無く、足やお尻への神経痛など神経根症状も見られないものが殆どですが、原因が特定できないために積極的で正確な治療を受けている方が少なく、完全に治癒するまでに長期間を要し痛みを我慢されている方も多いのが実情です。長時間同じ姿勢でいると痛みが増強したり、朝布団から起きる時に辛く動きだしてしまうと痛みが軽減する、重たいものを持つと痛いなど急性腰痛ほどの激しい痛みではないものの、持続的に長期間痛みや違和感を感じるものを慢性腰痛としています。また、長期的な痛みと機能障害は生活の質が低下してしまい、仕事や家事に影響し、結果的に精神的な健康まで損ねてしまうことも少なくありません。

腰痛の原因

【急性腰痛】一般には〈筋筋膜性腰痛〉〈椎間関節性腰痛〉の一部が急性腰痛になりえます。文字通り、筋肉もしくは筋肉を包む筋膜に傷がついて痛みを発するもの、腰椎と腰椎(腰の中心にある背骨)の関節を捻挫した形になり痛みを発するものです。

【慢性腰痛】病院では〈変形性腰椎症〉とか〈脊柱管狭窄症〉などの診断がなされる場合が多い様ですが、前述しておりますようにプライマリケアで腰痛の原因疾患を特定することは非常に困難なことです。現在の病院では、こういった痛みには消炎鎮痛剤やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の他、オピオイド(モルヒネ)が処方されることもあります。年齢素因、姿勢、生活スタイルなど腰痛が改善しにくい要因があるのです。慢性期が長いほど、本来の原因が他に合併した症状にマスクされてしまい、より沢山の要因が複雑に関与して痛みを発症しています。

病態として多くの要因が関与して、複雑に絡み合っている状態と言えます。慢性期の複雑な病態に対しては、東洋医学的問診と治療は大変有効です。

当院の施術

【急性腰痛】(ぎっくり腰)は鍼灸治療の有効性が高く、施術直後に症状の改善が見れる疾患の一つです。急性腰痛の場合、強い痛みのためうつ伏せの姿勢が難しい場合が多く、横向きに寝る姿勢もしくは椅子に座っていただく姿勢で施術することもあります。施術効果を最大限位発揮するために、腰背部に余分な力が入らない姿勢=患者様が一番楽な姿勢で施術を受けていただく事を重視しています。

当院は東洋医学の基本である、個々人の症状や体質に寄り添う施術をモットーとしています。腰痛回復を阻害する要因は「循環傷害」と「運動制限」です。

【慢性腰痛】は、まず細やかな問診と理学検査で出来るだけ正確に最初に発症した機序を明らかにしていきます。痛みを起こしている原因について、人体の解剖学・生理学的根拠に基づいた判断をしていきます。しかし、慢性腰痛の場合科学的根拠に基づく施術だけではなく、患者様の現在ある痛みについて、どこがどの程度痛くて、どういった動きができなくて、その機能障害が日常生活のどの場面で問題になっているのか、その事で精神的苦痛を強いられていないか、社会的な問題を生じていないかなどを鑑別していきます。時間経過と共に、痛みは修飾されます。痛みを助長しているものは何なのか、痛みの本質はどこにあるのか。時には痛みの意味さえ考えるのです。

これらの変化は慢性腰痛を助長する要因となりえるため、当院では治療対象となります。


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