もくの木ブログ
2017.03.31
♣ 不妊の悩みと鍼灸ケアについて
不妊症とは、病名ではなく、避妊をしていないにも関わらず、2年以上妊娠に至っていない状態のことを言います。
〈不妊の原因とは〉
不妊の原因は、男性因子40%、女性因子40%、原因不明20%と言われています。決して女性だけの責任ではないのです。
妊娠とは、本来、心身ともに健康であってはじめて成立するものです。健康な方が余剰エネルギーで子宮の中で新しい命を育て、出産に至ることができます。ところが、現代の不妊で悩んでいる方の多くは、慢性的に冷えで悩まされていたり、疲れがいつまでも取れなかったり、ストレスでイライラや疲弊していたりと、とても「心身ともに健康な状態」とは言えないケースが多いのです。
このような状態で、自然妊娠に至らず、一般不妊治療から高度生殖医療・・人工授精(AIH)や体外受精(IVF)、そして顕微授精(ICSI)とステップが進んだとしても結果が出ず、落ち込み、もう赤ちゃんをあきらめてしまおうか・・という方も大勢いらしゃいます。
西洋医学では不妊には以下のような原因があると言われています。
- 排卵因子(卵が育たない)
- ピックアップ障害(卵子が正常に卵管采に取り込まれない)
- 子宮頚管因子(精子が子宮に入れない)
- 卵管因子(卵管狭窄・卵管閉塞・卵管水腫)
- 受精しない(卵子と精子がであっても受精できない)
- 受精卵の成長が止まる(受精したのに卵の成長が止まってしまう)
- 子宮因子(着床しない)
- ストレス(仕事や環境の変化によるストレス)
- 配偶者側に原因(勃起障害・乏精子症・精子無力症・無精子症など)
- まず、不妊治療や体外受精を行ったが、なかなかうまくいかない方へお伝えしたいのは、なかなか子供に恵まれないのは検査ではわからないところに原因があるかもしれないということです。
東洋医学では昔から、妊娠・安産には温かいカラダと言われています。
不妊には、「冷え」をとる鍼灸はとても適した治療法です。不妊症のことを「腎」の不足と考えています。では、「腎」とはいったい何のことでしょうか?
「腎」は単に腎臓のことを言うのではなく、生殖器をつかさどり、誕生・成長・生殖・老化に至る一生の身体を調整している総称です。ホルモンも含まれます。生殖器に関わりが大きい「腎」は妊娠・出産にとって、大事な役割を果たしているのです。腎が不足している状態というのは内臓、子宮、卵巣、精巣などが正常に機能できず、子宮内膜症、月経異常、排卵障害、また機能性不妊、冷えなどが起こり、妊娠しにくい体となってしまっていると考えられます。
もともと身体の力が十分でないのに、高度生殖医療を受けても良い卵が採卵できなかったり、うまく子宮に着床したとしても、流産してしまう悲しい結果が起こるケースが少なくありません。それは身体の方で、「このお母さんの身体は妊娠が維持できる身体ではないから、赤ちゃんを育てる力がない。外にだしてしまおう」と拒否反応のようなものを示すのですね。だから妊娠が維持できないし、そもそも良い卵子が採卵できないのです。
〈不妊の鍼灸治療とは〉
鍼灸治療では、全身の気、血液、水のめぐりを整えていきます。そうして、人間が本来もっている自己治癒能力を高め、心身のバランスを整えていきます。冷えによる血行の悪さは不妊症の方に多くみられる症状です。冷えにより子宮、卵巣がうまく働いていないことが多く、血液の流れを良くする治療は冷えの解消に最も有効だといえます。全身に停滞していた流れを良くすることで、卵巣や子宮などの臓器に元々持っていた本来の働きを取り戻し、元気になることで妊娠のしやすい体に変わっていきます。
産婦人科などでの不妊治療との併用治療も相乗効果が大きいのです。
赤ちゃんが育ちやすい子宮環境づくりが重要ということです。
2017.03.29
♣ 産後の悩みと鍼灸ケアについて ②
〈東洋医学に基づく産後鍼灸ケア〉
子宮の戻りが遅れる、悪露がいつまでも続く、産褥熱が出る、また、乳腺炎や膀胱炎、マタニティーブルーや産後うつなど、産後の悩みを見てきましたが産褥期の経過は人によってさまざまです。
〈なぜ、産後の肥立ちが良い人もいれば、悪い人もいるのでしょうか?〉
その違いは、その人の治ろうとする力、すなわち自己治癒力の強さによるのです。
自己治癒力とは、病から身体を守る免疫力や傷の修復能力、細胞が生まれ変わる再生能力や憂うつや落ち込んだ気持ちから立ち直る力などを言います。生命を維持して健康に生きていくために必要な力を総称して自己治癒力と言います。全ての人の身体に本来備わっているものです。
そして、出産後、元の身体に戻ろうとする回復力もこの自己治癒力の1つです。
〈では、なぜ自己治癒力は低下してしまうのでしょうか?〉
東洋医学では昔から「冷えは万病の元」と言われてきました。冷えは、人に本来備わっている自己治癒力を低下させてしまいます。みなさんの身体には疲れが必ずたまっています。疲れとは、仕事の内容、人間関係、食生活、生活習慣、これまでにかかった病気やけが、交通事故などが元になるものです。
そして、これらの要因が重なり合いながら、気血の流れ(血流)にかたよりやとどこおりが起こり、だんだんと身体の芯が「冷え」、自己治癒力が低下していきます。この冷えを「根元的な冷え」といい、様々な病の根本原因と考えています。近年、現代医学においても、免疫力の低下や自律神経の乱れが冷えと関係していると言われるようになってきました。
〈妊娠・出産は身体にとても大きな負担となります〉
特に出産にともなう出血や体力の低下は、気血の流れ(血流)に乱れを起こし、一時的に大きな「冷え」を生じます。そして、自己治癒力(回復力)が低下し、子宮復古不全を招いたり、悪露がいつまでも続いたり、菌への抵抗力が落ち膀胱炎や乳腺炎、産褥熱が出たりするのです。また、「冷え」は精神面にも影響が及び、産後うつを招くこともあります。
〈産後の鍼灸治療とは〉
鍼灸治療とは、「人が本来持っている自己治癒力がきちんと働くように導くこと」です。
産後、辛い症状が起きるほど低下してしまった治癒力は、自分の力だけでは回復が難しい場合があります。鍼灸治療はこの治癒力がきちんと働くように手助けをします。心と体が元気になる鍼灸治療は、産後ケアにとても適した治療法です。
2017.03.28
♣ 産後の悩みと鍼灸ケアについて ①
赤ちゃんを出産後、お母さんの体は妊娠前の元の身体に戻っていきます。この時期を産褥期(産後の肥立ち)といい、6週間~8週間と言われています。産後に身体と心が順調に回復していくことを、昔から「産後の肥立ちが良い」と言われてきました。
妊娠・出産は女性にとって、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。特に産後は、出産時の出血や哺乳のために、血液が不足しやすい時期です。
そして、この時期には、悪露(おろ)がいつまでも赤い、高熱が出る、排尿時に痛む、乳房がはれて痛む、マタニティーブルーや産後うつなど、さまざまな悩ましい症状が起こることがあります。
ここでは、産後の症状と原因、そして東洋医学に基づく鍼灸治療の有用性についてお話します。
〈産後の悩ましい症状〉
〈悪露がいつまでも赤いとき〉
悪露とは、出産後に胎盤がはがれたあとの出血や産道の傷からの分泌物、粘液や細胞組織のかけらなどが混じり合って排泄される分泌液のことです。子宮組織が回復してくるので、悪露の色も薄く、量も少なくなっていきます。
しかし、10日以上をすぎても血が混ざったような赤い色をしている場合、子宮復古不全の疑いがあると言われています。
子宮復古不全とは、子宮の収縮が十分でないために子宮の回復が遅れることです。
悪露は産後3~6週間ほど続きます。子宮が収縮するにつれて、子宮内の傷も治り、出血もだんだんと減ってきます。
原因として、子宮内に胎盤の一部や卵膜のかけらなどが残っている場合や、悪露が出にくくなっている場合、また、子宮収縮を促すオキシトシンというホルモンの分泌が少ない場合などが考えられています。
子宮の回復が遅かったり、家事や仕事を早くからやり過ぎたりすると、いつまでたっても赤色の悪露が続くことがあります。
悪露の状態は、子宮の回復を示すバロメーターと言えます。
〈高熱が出るとき〉
産後2~3日したころ、突然38度~39度の高熱がでることがあります。これは産褥熱と言われています。
分娩の時にできた子宮壁や膣壁の傷から細菌が入ったことが原因です。出産後に体力が低下したために免疫力が落ち、体内で菌が繁殖したものと考えられています。また、悪露が停滞すると、細菌が増えやすい環境となるため注意が必要です。
他に、腎盂炎の場合も40度を超えるような高熱が出ます。細菌が尿道に入り、感染することがあります。産後は、子宮や膣、外陰部などさまざまなところに傷があるため、細菌に感染しやすい状態なのです。
産褥熱は、昔は母体の生命にも危険が及ぶために恐れられていましたが、現在では、分娩時に予防処置もとられるため心配は少なくなっています。
〈排尿時に痛むとき〉
尿の回数は多いのに、1回の尿の量は少なく、排尿時に痛みを感じる場合は膀胱炎の可能性があります。膀胱は産道と隣り合っているので、出産時の圧迫で傷がついたり、尿が出にくくなったり、細菌にも感染しやすくなるためです。悪露の手当てをきちんとして、清潔を保つことが大切です。
〈乳房がはれて痛むとき〉
これは、初産に多く見られる乳腺炎です。乳房が赤くはれて痛み、硬く、熱を持っている、などの症状があります。寒気がして38度以上の熱が出ることもあります。乳腺炎は、乳首の傷から細菌が入り、炎症を起こすことが主な原因と言われています。産後2~3週間になることが多いようです。
〈マタニティーブルー・産後うつ〉
マタニティーブルー・産後うつの原因は、西洋医学ではまだはっきりとはしていませんが、出産後はホルモンバランスが激変するため、これが精神状態に影響して起こると考えられています。マタニティーブルーは一過性の情緒不安定で、ちょっとしたことで憂鬱になったり、涙もろくなったり、イライラしたり、落ち込んだりします。症状は出産後2~3日以内にあらわれ、10日ぐらいで軽快します。通常、ホルモンバランスは1~2週間で妊娠前の状態に戻り、気持ちも自然に落ち着いてきます。
一方、産後うつは産後2~3週間から数カ月以内にはじまり、気持ちが落ち込み、終日ふさぎ込むなど心の症状があらわれます。一過性のマタニティーブルーとは違い、症状が1カ月、長いと年単位で続くと言われています。不安、不眠、食欲不振など身体的な症状を伴うこともあります。