もくの木ブログ

2016.10.05

♣ 耳鳴りについて

♣ 耳鳴りについて

耳鳴りとは、耳の中、あるいは頭の中で本来ないはずの音が聞こえている状態を言います。蝉が鳴いているような「ジー」という音であったり、高音の「キーン」という音であったり、低めの「ゴー」という音であったりします。

また、耳鳴りの多くは〈難聴〉〈めまい〉〈耳閉感〉などの耳症状を伴います。難聴の50%以上に耳鳴り耳鳴りの75%以上に難聴があるといわれています。

耳鳴りによって不眠や鬱にまで発展することもありますが、ご本人のつらさが客観的に分かってもらいにくいため、患者様の精神的苦痛が増すケースが多いようです。

耳鳴りの鑑別について

耳鳴りには、【他覚的耳鳴り】と【自覚的耳鳴り】という分類があります。

【他覚的耳鳴り】外部からも聴くことのできる耳鳴りです。つまり、実際に聞こえる音ということです。耳のそばに聴診器を当てたりすると他の人も聴くことができます。音の原因は耳の中の筋肉の痙攣、鼓膜の異常、顎関節の発する音、血管の拍動などが考えられます。 中でも血管の拍動による耳鳴りでは、血管の病変が考えられます。これは、脳に向かう動脈に瘤ができるなどの理由で雑音が起こるものです。この音は、心臓の拍動に合わせて聞こえるのが特徴です。このような場合は血管が裂ける危険性があるので、すぐに脳神経外科や耳鼻咽喉科を受診してください。

【自覚的耳鳴】(非振動性)自分にしか聞こえない耳鳴りで、ほとんどの耳鳴りはこちらに属します。 難聴をともなうことが多く、難聴の程度もほとんど自覚のない軽いものから、生活に支障をきたすほど重いものまでさまざまです。人口の1割か2割の人は耳鳴りを経験するといわれ、65歳以上では3割もの人が耳鳴りを経験しているといわれています。とはいえ、その全ての人が耳鳴りに悩まされているわけではありません。耳鳴りがあっても気にならない人も多いのです。なお、非常に静かな環境にいると「シーン」という音が聞こえることがありますが、これは生理的な耳鳴りであり、全く問題ありません。

耳鳴りの原因

耳鳴りの原因は、耳の病気や全身の病気である場合もあります。あるいは薬の副作用としても起こり得ます。 ただし、原因が特定できない耳鳴りのほうが多いのも事実であり、これが治療を難しくしています。

1.耳の病気による耳鳴り

耳鳴りを起こす病気としては、〈内耳炎〉〈滲出性中耳炎〉〈耳垢塞栓〉〈耳管狭窄症〉〈耳硬化症〉〈メニエール病〉〈老人性難聴〉〈突発性難聴〉〈聴神経腫瘍〉〈外傷(耳そのものの怪我)〉などがあります。 難聴を起こす病気はすべて耳鳴りを伴う可能性があるということです。 耳の病気による耳鳴りは、原因となる耳の病気が治ればなくなります。

このうち、病気と言い難いのは老人性難聴で、30代を過ぎると誰でもなりうる加齢変性といえます。 音を感じるのは内耳の蝸牛管の中にあるコルチ器という部分です。ここには有毛細胞があり、振動を感じ取ります。その振動の周波数が脳に伝えられることで音として認識されるのです。 加齢にしたがって高い周波数の有毛細胞が脱落し、高音が聴こえにくくなってきます。これが老人性難聴です。耳鳴りや難聴以外の症状がなければ心配はありません。

2.耳の病気以外で起こる耳鳴り

耳の病気以外でも耳鳴りが起こることがあります。 むち打ち症、顎関節症などで強い耳鳴りが出ることが知られています。 これは、内耳の神経と首の筋肉に密接な関係があるためで、むち打ちでは6割の患者様に耳鳴りが起こるというデータもあります。 また、薬の副作用によって耳鳴りが起こる場合もあります。 かつて結核患者の多かった時期、特効薬としてストレプトマイシンがよく使われました。当時「ストマイ難聴」という言葉ができたように、ストレプトマイシンやカナマイシンなどの抗生物質の副作用として難聴が起こり、耳鳴りを伴うこともあります。一部の抗がん剤や利尿剤(高血圧の薬として使われることも多い)も耳鳴りを起こします。ドロドロ血を防ぐと言われるアスピリンも、たくさん服用すると耳鳴りが起こることもあります。アスピリンの副作用にはこのほかに胃腸障害などもありますから、医師の処方以外の服用はお勧めできません。 これらの薬による副作用で起こる耳鳴りは、服用をやめることで治ることもありますが、治らないこともあります。

当院の治療

耳鳴りには頸や肩の筋肉の緊張やコリと、自律神経の関与が深く関わっています。内耳を全て切り取ってしまっても耳鳴りが起こるといわれているように、耳鳴りには脳も関係しているようです。 逆にいえば、頸と肩のこりをゆるめ、内耳や脳への血行循環を改善し、リラックスさせて副交感神経を優位にすれば多くの耳鳴りは改善するということです。

鍼は、硬くなった頸や肩の筋肉に直接届き、緊張をゆるめることができます。鍼を刺す刺激によって血流も改善し、「軽くなった」「やわらかくなった」と感じていただけるはずです。肩や頸を通って内耳や脳に到達する血管も、硬くなった筋肉によって締め付けられることがなくなります。お灸によって物理的に温める方法も血行の促進、免疫力の向上につながります。 なにより、鍼灸によって副交感神経が優位になることが知られており、リラックスした状態では耳鳴りが気にならなくなるのです。

また、東洋医学の考え方では「耳」は「腎」が司っていると考えます。(臓器としての腎臓というより、「腎」というカテゴリーでくくられた体の機能と考えてください。)「腎」はまず、「先天の精」が蓄えられているところです。「先天の精」とは両親からもらった生命力のことで、「腎」にこれが保存されています。この貯金を使い果たしてしまうと命が燃え尽きると考えられています。 ですから、人間はこの貯金を減らさないように、毎日食べ物や飲み物、空気などから精を得ているのです。外から得られるこれらの精を「後天の精」と呼びます。「腎」の働きが弱ると、生殖機能が衰え、耳に問題が起こったり、骨がもろくなったり、朝早く目覚めて睡眠時間が短くなったりします。また、疲れやすくなるのも特徴です。いわゆる老化現象と呼ばれるものは、腎の働きが弱ることで(つまり、先天の精のストックが減ることで)起こってくると考えられています。

当院では、この「腎」に働きかける治療を全身におこないます。 耳鳴りなのに、なぜ全身を治療するのかと思われるかも知れませんが、それはこのような東洋医学的な見地に立った治療をするためです。 耳鳴りが全身におよぼす影響を考えれば、むしろ全身を治療しないほうが不自然と言えるかもしれません。


« | »